2017.12.28

12月9日、熊谷ラグビー場。

関東大学ラグビーリーグ戦1部2部入替戦の第1試合ハーフタイム。
正面スタンド中央の入口前を通りがかると、テントの下で第2試合の監督と主務(専大は兒玉がメンバー入りしていたため副務の小南)、レフリー、関東協会の役員が四角に座り、メンバー表とルール、注意事項の確認をしていた。このような光景を見るのは初めてだったのでしばらく見ていのだが、協会役員が言った「引き分けの場合はスコアの内容にかかわらず1部校が残留です」というひと言が頭に残った。

この日の第1試合は1部7位の拓大対2部2位の立正。
両校とも留学生を擁するチームだが、今年の立正はリーグ戦での歯ごたえからしていい勝負をするのではないかと思っていた。その予想通り前半はまず立正が2トライを先制。しかし拓大も次第に個の力を生かした攻めで圧力を強め、トライを奪い返す。拓大が逆転するとすかさず立正がトライを奪って再逆転。しかし拓大が追いつくという展開で前半終了時点で19-19。

後半は拓大が突き放しにかかり、32分に40-26となった時点で勝負あったかに見えた。
しかしここから立正が盛り返し2T2Gを決めて同点に追いつく。
39分に奪ったトライはノーホイッスルだっただけに、残されたわずかな時間で逆転することも不可能ではない。
時間はわずかながら残っている。

拓大のキックオフをしっかりキャッチした立正はボールをつないでセンターラインに向かって進むと拓大はたまらずノットロールアウェイ。
すでに40分は過ぎていたがペナルティを得た立正はタッチキックで拓大陣に入る。
10メーターと22メーターラインのちょうど中間あたり、絶好の攻め頃の位置でのマイボールラインアウトだったが、これを拓大にキャッチされるや即座に蹴り出されてノーサイドとなった。

歓喜にわく拓大、ガックリうなだれる立正。
それは入替戦に引き分けという結果はないという事実を改めて脳裡に焼き付けるに十分な試合だった。

第2試合のアップが始まるとメイン、バックともスタンドは両チームのサポーターでほぼ埋まった。

しかし、関東は2年前の入替戦のように他部の学生を動員するまでのことはしていなかった。
一方、専大側はSSCが立てた「専修大学」の幟がバックスタンドにはためき、昇格を期待するサポーターやOBが集結。
気合いを入れて挑戦する専大と不本意ながらそれを受けることになってしまった関東、その立場は2年前とは真逆。専大は3年前、日大に勝って昇格を果たした時と同じ雰囲気を作り出すことに成功した。
試合会場であるBグラウンドは器が小さい(Aグラウンドはワールドカップのために大規模改修中)。
しかしそれだけにスタンドとピッチの距離が近く、サポーターの声援は目の前の選手にダイレクトに届く。
場の空気を凝縮する効果はBの方がAよりはるかに上で、スタンドからの圧力は入替戦の独特の雰囲気とあいまって選手のプレーに影響を与える。

午後2時キックオフ。
いきなり専大が敵陣へ攻め込んで連続攻撃を仕掛けた。
2部ではこの攻撃で簡単にトライが取れたが、関東のディフェンスも分厚く、スカウティングの成果が見られる。
関東にとって専大の両ロック、とくに山極が高いことは十分にわかっている。
しかし自陣で専大のペナルティから得た関東最初のラインアウトを山極がタップ。
意識すればするほどかえってミスをしてくれるのが、絶対的高さのアドバンテージだ。
専大はここからの連続攻撃で郡司がラインブレイク。ゴールの真下に飛び込んだかに見えたがトライにはならず関東ボールに。

その後も専大が敵陣で押し続けるが膠着状態が続く。
この均衡を破ったのはやはり郡司だった。

敵陣ゴール前で得たペナルティからスクラムを選択、いったんボールを右へ持ち出してから左へ振ると郡司がやすやすとトライを決めた(ゴール成功)。
これでエンジンがかかった専大は再び郡司が関東のタックラーをことごとく外してゴール下にトライを決め14−0。
さらにラックからサイドを突いた高橋のパスを受けた西村が突進してトライ(21−0)。
試合の主導権を完全に握った。
この後、自陣でのパスミスから7点を失ったが、水野、そして前半終了間際にまたしても郡司がトライを決め33−7。これ以上はない形で前半を終了。
レギュラーシーズンと変わらぬ戦いぶりに予想以上のスコアでの勝利が頭をよぎる。

ところが後半1分、甘い防御を突かれて右スミにノーホイッスルトライを取られるとガラリと流れが変わり、15分までに3T2Gを奪われ33-26、勝負の行方はまったくわからなくなった。
しかし18分に関東が自陣で反則。
ここで専大はPGを選択すると松浦がキッチリ決めて関東へ傾いた流れをせき止めることに成功した。
続く25分に徳田がラックから出たボールを右へ持ち出し池田につなぐと関東の甘くなったディフェンスを1人2人とかわして右中間へトライ。
ゴールキックは松浦の力なら問題ないが、入れ頃外し頃ともいえる角度。
過去にこのようなキックが入らずに涙を飲んだことも多々あった。
しかし、ここは松浦がのしかかるプレッシャーをはねのけて決めて43−26。残り15分で17点差となる。

2T2Gでは追いつけない点差なだけに、これでホッとひと息つけるかと思いきや、ここからまた関東の怒涛の攻めを受けて31分に1T1Gを追加されて43-33、さらに38分に1Tを加えられて43-38。
しかし、先ほどの松浦と左右の違いはあるが同じような角度の関東のゴールキックは決まらなかった。
もしここでゴールが決まっていれば43-40。
こうなるとPGで同点となるだけに、専大にとっては自陣に入られてペナルティを犯すこともできなくなる。
が、5点差であればゴールを割られなければいい。
たった2点ではあるが、この心理的な差は大きい。
そして専大はこの5点差を守りきって勝ち、一部再昇格を果たした。

第1試合の立正は引き分けが精一杯だった。
が、専大は勝ちきった。

それは単純な運のあるなしではなく、今季、プレミア、ジュニアとも公式戦を全勝で駆け抜けた専大にそれだけの力があったからで、酷な言い方だがそれが立正との力の差だった。
かつて、日本シリーズで西武に敗れたヤクルトの野村監督は、翌年のミーティングで「大同小異」をテーマにしたという。
大きくは同じだが小さいところが異なる。それが勝負どころでの差となり、ひいては勝敗を決する。
結局のところ、キックオフからノーサイドまで、一つひとつのプレーの精度で専大が上回ったことが、僅差の勝利を呼び込んだのであって、その部分で負けたのが関東であり立正だった(※)。

と考えると実はもう一つ、この一週間前、ジュニアの入替戦で中央に勝ったこともとても大きな意味があったと思う。
この試合も専大が先制したが最後は奇しくも同じ5点差まで詰め寄られた。
もし同点になったら中央の残留。
だが、最後は相手のミスに助けられながらも必死のディフェンスで逃げ切りに成功した。

このゲームを関東戦のメンバーは全員がピッチ外から見ている。
そして一週間前と同じ状況が訪れたのだから、自分たちが何をしなければいけないかはより強く意識付けられていただろう。その意味で中央とのジュニア入替戦は本当に貴重だった。
そして、この試合を経験できたのは、この1年、単にプレミアの1部昇格のみならずジュニアのカテゴリー2昇格を目標に掲げて、チーム全体を底上げしてきたからに他ならない。
その積み重ねの成果が最後に結実したのである。

もちろん他の大学も同じように努力している。
ラグビーだけでなく、野球にしても駅伝にしても、かつてとは比較にならないほど大学間の競争が激しくなり、生半可な努力では勝ち抜くことができない。
それだけに今回のラグビー部のダブル昇格は賞賛されるべき快挙だ。

とはいえ課題はまだまだある。
OB諸氏によれば、このディフェンスでは1部では厳しいとの声も多い。
確かに2部では圧倒しながらも最後は5点差しかつけられなかったのだから1部のレベルは高い。
が、それは村田監督も選手もわかっている。
とくに現3年生は1年の時に1部を経験しており、近年の専大にはいなかった2シーズンを1部で過ごす世代だ。その彼らが最上級生になって引っ張っていくのだから、来シーズンの専大は2015年のシーズンとは経験値が異なる。
なにより努力の方向性が間違いなく正しいことはこの1年で証明されたのだから、大学選手権出場という次なる目標に向かって来季はさらなる勝負の年となる。

最後に松土キャプテン以下、現4年生に心から感謝の意を表したい。
彼らは1年次に1部昇格する原動力となったが、2年で降格を味わい、そして4年で再び昇格を果たした。4年間で3回の入替戦を経験し、この間、つねにチームの中心にいただけに、サポーターにとっても記憶に残る世代である。

※この試合のMVPは3トライをあげた郡司ということになるのだろうが、個人的にはキッカーの松浦に1票を入れたい。6トライ中5ゴール+1PG。最終的には後半のキック成功で得た計5点が得点差だったのだから、素晴らしい活躍だった。

文責:京谷六二